梅雨どきを、すこやかに 家のなかでできる、体を動かす習慣
- ひろゆき 大石
- 6月5日
- 読了時間: 11分
こんにちは。見付の町に長く暮らしている者です。
梅雨に入って、しとしとと雨の続く日が多くなりました。窓の外を見れば、紫陽花が日ごとに色を深めていく。雨に濡れた葉の緑も、いつにも増して鮮やかです。こういう季節は、外に出るのがついおっくうになって、家のなかで過ごす時間が長くなりがちですね。
けれど、雨の日が続くこの時期こそ、体を動かすことを少しだけ意識しておきたい。今日は、お茶でも飲みながら、梅雨どきをすこやかに過ごすための、暮らしのなかのささやかな工夫について、ゆっくりとお話しできればと思います。
梅雨というと、どうしても気が滅入りがちな季節ですが、私はこの時期も、これはこれで悪くないと思っています。雨に濡れた庭の緑、軒先を伝う雨だれの音、そして何といっても、色とりどりの紫陽花。せわしない毎日のなかでは見過ごしてしまいそうな、季節の小さな美しさが、雨の日にはゆっくりと立ちあらわれてきます。家のなかで過ごす時間が長くなるぶん、窓の外の景色に目をやったり、季節の移ろいに耳を澄ませたりする、そんなゆとりも生まれます。雨の季節には、雨の季節なりの楽しみ方があるのです。
急がず、無理をせず。けれど、体を動かすことだけは、少しずつでも続けていく。それが、年を重ねてからのおだやかな毎日を支えてくれます。
雨の季節に、体がなまりやすいわけ
梅雨の時期に体がなんとなく重く感じられるのには、いくつかの理由があります。ひとつは、雨で外出が減り、自然と体を動かす機会が少なくなること。もうひとつは、じめじめとした湿気と気圧の変化が、体のだるさを呼びやすいことです。雨の降る前に頭が重くなったり、古傷が痛んだりする、という方も少なくないでしょう。これは気のせいではなく、気圧の変化が体に影響している、と考えられています。こういう日は、無理をせず、体の声に耳を傾けて過ごすのがいちばんです。
とくに年を重ねてくると、数日体を動かさないでいるだけで、足腰の力はあっという間に落ちていきます。「たった数日」と思うかもしれませんが、これが思いのほか大きい。一度落ちた筋力を取り戻すには、落ちたときの何倍もの時間がかかる、とも言われます。
「動かないこと」が、いちばんの心配
私がこの歳になって実感するのは「体にとっていちばんよくないのは、動かないでいることだ」ということです。痛いから動かない、雨だから出ない、おっくうだから座ったまま。その気持ちはよく分かります。けれど、動かないでいると、体はますます動きにくくなり、気持ちまで沈んでいく。逆に、ほんの少しでも体を動かすと、不思議と気分が晴れて、その日一日が明るくなるものです。
大切なのは、頑張りすぎないことです。若い頃のように汗をかくような運動をする必要はありません。気持ちいいなと感じるくらいの、ゆるやかな動き。それを毎日少しずつ続けることが、いちばんの薬になります。
それからもうひとつ、梅雨どきに気をつけたいのが、体のなかの水分です。汗をかく夏ほどには喉が渇かないため、つい水分をとるのを忘れがちになります。けれど、湿気の多いこの時期も、体は知らないうちに水分を失っています。喉が渇いたと感じる前に、こまめに少しずつ。朝起きたとき、食事のとき、そして体を動かしたあとに、お茶や水を一口。これだけでも、体の調子はずいぶんと変わってきます。年を重ねると、喉の渇きを感じる力そのものが弱くなるとも言われますから、時間を決めて飲むくらいの心づもりがちょうどよいのです。
雨の日が続くと、気持ちもどこか晴れないものです。けれど、体を動かすことは、心にもよく効きます。少し体を動かして、血のめぐりがよくなると、気分が明るくなり、夜もよく眠れる。よく眠れれば、翌朝の目覚めもすっきりして、また体を動かそうという気持ちになる。こうしたよい巡りを、暮らしのなかに少しずつ作っていく。それが、梅雨どきをすこやかに過ごすコツなのだと思います。
家のなかでできる、ささやかな習慣
雨で外に出られない日でも、家のなかでできることはたくさんあります。私が毎日の暮らしのなかで続けている、ささやかな習慣をいくつかご紹介します。どれも、特別な道具も広い場所もいりません。
朝、目が覚めたら
布団のなかで、まず足首をゆっくり回すことから始めます。右に十回、左に十回。次に、足の指をグーパーと開いたり閉じたり。寝ている間にこわばった体を、少しずつ目覚めさせていくような気持ちで。起き上がったら、雨戸やカーテンを開けて、外の光を部屋に入れます。曇り空でも、朝の光を浴びると、体のなかの時計がきちんと動き出します。
急に起き上がると、めまいがしたり、ふらついたりすることがあります。とくに朝は、体がまだ目覚めきっていません。布団のなかで体を少しほぐしてから、ゆっくりと起き上がる。一度ふちに腰かけて、ひと呼吸おいてから立つ。こうした、ほんのひと手間が、思わぬ転倒を防いでくれます。慌てず、急がず。これは、年を重ねてからの暮らし全般に通じる、大切な心がけだと思います。
朝の光を浴びることには、もうひとつよいことがあります。朝にしっかり光を浴びると、その日の夜、自然と眠気が訪れやすくなると言われています。雨の日は部屋のなかが暗くなりがちですが、だからこそ、起きたらまずカーテンを開けて、できるだけ明るい場所で過ごす。窓辺で軽く体を動かしながら、外の景色を眺める。それだけで、一日のはじまりがすっきりとしたものになります。
日中、思い出したときに
一日のなかで、座っている時間が長くなりすぎないように気をつけています。テレビを見ているとき、コマーシャルになったら一度立ち上がる。台所のへりにつかまって、かかとをゆっくり上げ下げする。これを十回ほど。ふくらはぎは「第二の心臓」とも言われ、ここを動かすと、体じゅうの血のめぐりがよくなります。
椅子に座ったままでもできることがあります。背筋を伸ばして、両肩をぐるりと大きく回す。前に五回、後ろに五回。肩のこわばりがほぐれて、呼吸がすっと深くなります。
雨の日に私が心がけている、体を動かすための小さな工夫を、いくつか書き出してみます。
朝起きたら、布団のなかで足首と足の指をゆっくり動かす
座っている時間が一時間を超えたら、一度立ち上がる
テレビのコマーシャルのあいだに、かかとの上げ下げをする
台所仕事のついでに、つかまって軽く膝の曲げ伸ばしをする
廊下を、いつもよりほんの少し大きな歩幅で歩いてみる
体を動かしながら、頭も使う
体を動かすことに、ちょっとした頭の体操を加えると、楽しみが増えます。たとえば、足踏みをしながら、好きな歌を口ずさむ。かかとの上げ下げをしながら、百から七ずつ引いていく。体と頭を同時に使うことは、これからの暮らしを元気に保つうえで、とてもよいと言われています。何より、ひとりでも飽きずに続けられるのがいいところです。
私のおすすめは、季節の歌を歌いながら体を動かすことです。今の時期なら、雨にちなんだ童謡などを口ずさむと、なんとも言えず心が和みます。歌を歌うと、自然と呼吸が深くなり、それ自体がよい運動にもなります。声を出すことは、のどの力を保つことにもつながりますから、一石二鳥です。窓の外の雨の音に耳を澄ませながら、ゆっくりと体を動かし、季節の歌を口ずさむ。そんなひとときは、雨の日ならではの、ささやかな楽しみです。
無理のない範囲で、毎日続けられる形を見つけることが大切です。人それぞれ、体の調子も、暮らしの時間割も違います。朝が得意な方は朝に、夜のほうが落ち着く方は夜に。テレビを見る時間に合わせてもいいし、食事のしたくのついででもいい。自分の暮らしのリズムのなかに、無理なく組み込める形を見つけられたら、それがいちばん長く続きます。
雨の日の、よくある声に答えて
雨で外に出られない日が続くと、足腰が弱りませんか?
数日動かないだけでも力は落ちやすいものですが、家のなかでの足首回しやかかとの上げ下げなど、ほんの少しの運動を毎日続けるだけで、ずいぶん違ってきます。大切なのは、量より続けることです。
体を動かすのは、一日のうちいつがよいですか?
決まりはありません。朝が得意な方は朝に、夜が落ち着く方は夜に。テレビを見る時間や、食事のしたくのついでなど、ご自分の暮らしのリズムに無理なく組み込めるときがいちばんです。
雨上がりに散歩するとき、気をつけることは?
足元のしっかりした靴を履き、マンホールの蓋や白い線など滑りやすい場所に注意してください。疲れたら無理せず休み、こまめに水分をとりましょう。
雨の合間と、これからの季節に向けて
梅雨どきといっても、一日じゅう雨が降り続くわけではありません。半日からりと晴れる日や、雨がやんで空が明るくなる時間が、必ずあります。そういう合間を見つけたら、思いきって外の空気を吸いに出かけましょう。
見付のあたりは、旧東海道の宿場町としての面影が残る、平坦で歩きやすい道が多い町です。急な坂が少ないので、ゆっくりと歩くのに向いています。雨上がりの道は、土や草の匂いが立ちのぼって、いつもの散歩道がまた違った表情を見せてくれる。紫陽花の咲くお宅の前で足をとめたり、雨に洗われた木々の緑を見上げたり。短い時間でも、外の光を浴びて歩くと、体も心もずいぶんと軽くなります。
この時期の見付を歩く楽しみのひとつは、なんといっても紫陽花です。あちこちのお宅の庭先や、道のかたわらに、青や紫、淡い桃色の花が、雨に濡れていっそう美しく咲いています。同じ株でも、土の具合によって花の色が変わると言われ、一輪一輪をのぞきこむと、いつまでも見飽きません。歩く先々で出会う季節の花が、雨の日の散歩を、ちょっとした小さな旅のように感じさせてくれます。急ぐ必要はありません。気になる花があれば立ちどまり、深呼吸をして、また歩き出す。そんなゆったりとした歩き方が、この町にはよく似合います。
雨上がりの道を、ゆっくり歩く。それだけで、その日一日が、少し豊かになる気がします。
歩くときに、いくつか気をつけたいことがあります。雨上がりの地面は滑りやすいので、足元のしっかりした靴を履くこと。マンホールの蓋や、白い線の引かれたところは、濡れるととくに滑りやすいので注意します。そして、無理をしないこと。疲れたら遠慮なく休み、水分をとる。暑くなくても、体は思った以上に水分を欲しがっています。
これから梅雨が明ければ、いよいよ夏本番です。暑さの厳しい季節になると、今度は熱中症に気をつけながら、涼しい時間帯に体を動かすことが大切になってきます。梅雨のあいだに体を動かす習慣をつけておくと、夏になってもその調子を保ちやすい。季節の変わり目を、無理なく乗り越えていくための備えにもなるのです。
続けることが、何よりの力
体を動かすことについて、あれこれとお話ししてきましたが、いちばん大切なのは毎日少しずつでも続けることです。一日にたくさん頑張るよりも、ほんの少しでいいから、毎日続ける。そのほうが、体にとってはずっとよいのです。
そして、できれば誰かと一緒に。ご家族と電話で「今日は雨だから、家で足踏みしたよ」と話す。ご近所の方と「雨上がりに少し歩いてきた」と言葉を交わす。そんなやりとりが、続けるための励みになります。ひとりで頑張ろうとすると、つい三日坊主になってしまうものですが、誰かとゆるくつながっていると、不思議と続くものです。
見付のような町には、昔から、こうした人と人とのおだやかなつながりが残っています。朝のごみ出しのときに交わす挨拶、買い物帰りの立ち話、地域の集まりでの何気ないおしゃべり。そういうつながりのなかで、「最近どう?」「変わりない?」と気にかけ合う。体を動かすことも、そんな日々のつながりのなかにあると、ずっと続けやすくなります。誰かと約束して一緒に歩く、というほど大げさでなくていい。あの人も頑張っているからと思えるだけで、心の張りになるのです。住み慣れた土地で、顔なじみに囲まれて暮らすことの心強さを、こういうときにあらためて感じます。
離れて暮らすご家族にとっても、親が毎日体を動かしていると聞けば、安心につながるでしょう。今日はこんなことをしたという何気ない報告が、お互いの暮らしを、そっと見守り合うことになる。季節の話と一緒に、体のことも気軽に話せる間柄でいられたら、それは何よりの支えです。
雨の季節は、たしかに少し憂鬱です。けれど、紫陽花の美しさも、雨上がりの澄んだ空気も、この時期だけのもの。家のなかで体を動かし、晴れ間には外の空気を吸い、季節の移ろいに目を向ける。そんなふうに過ごしていけば、梅雨もまた、おだやかな日々の一部になります。なお、体の動かし方や運動の加減は、人それぞれ体調によって異なります。持病のある方や気がかりのある方は、かかりつけのお医者さまに相談しながら、ご自身に合った形で無理なく続けてください。一日一日を、急がず、無理をせず。みなさまの暮らしにも、すこやかでおだやかな時間が流れますように。
それでは、今日はこのあたりで。また、季節のたよりをお届けします。
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