親が施設に入居したら、実家はどうする? ― 売る・貸す・残すを整理する
- ひろゆき 大石
- 6月10日
- 読了時間: 6分
親御さんが介護施設に入居されたあと、誰も住まなくなった実家をどうするか。私たちのもとに寄せられるご相談のなかで、いちばん多いのがこのテーマです。
「まだ親は元気だし、家を売るなんて縁起でもない」「思い出の詰まった家を、すぐには手放せない」――そう感じるのは、ごく自然なことです。実家の扱いに正解はひとつではありません。ただ、何も決めないまま時間だけが過ぎると、選択肢が少しずつ狭くなっていくのも事実です。
今日は、施設入居後の実家について「売る・貸す・残す」という三つの道を、磐田市・袋井市の地域事情と税金の話も交えながら、順番に整理してみます。
まず、あわてて決めなくていい
最初にお伝えしたいのは、施設に入居したからといって、すぐに実家を処分する必要はないということです。
入居直後は、ご本人の体調や施設での生活が落ち着くまで、ご家族も気持ちの余裕がない時期です。また「もしかしたら家に戻りたいと言うかもしれない」という気持ちが残っているうちは、売却の決断は難しいものです。
一方で、次の三つだけは早めに確認しておくことをおすすめしています。
家の名義は誰か(登記簿上の所有者を確認する)
親御さんの意思確認ができる状態か(売却契約はご本人の意思能力が前提になります)
施設費用と家の維持費を合わせた毎月の収支
とくに二つ目は重要です。不動産の売買契約は、所有者ご本人に契約内容を理解する力(意思能力)があることが前提です。認知症が進行してからでは、ご家族であっても自由に売却することはできず、家庭裁判所が関与する成年後見制度の利用が必要になる場合があります。その場合、売却には裁判所の許可など手続きの制約も加わります。「売る・売らない」を決めるためではなく、いつでも決められる状態を保つために、親御さんがお元気なうちに家族で一度話し合っておくことが何より大切です。
選択肢1:売る
空き家になった実家を売却する場合、タイミングによって税金の扱いが大きく変わります。
まず、親御さんがご存命のうちに売る場合。ご本人が住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すれば、マイホームを売ったときの3000万円特別控除が使える可能性があります。施設入居から時間が経つほど、この期限は近づいてきます。
次に、相続後に売る場合。一定の要件を満たす相続空き家には、譲渡所得から最高3000万円(取得した相続人が3人以上の場合は2000万円)を控除できる、いわゆる空き家特例があります。こちらは相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却が条件で、制度自体の適用期限は現行制度では2027年12月31日までとされています。昭和56年5月31日以前に建築された家屋が対象になるなど細かな要件があり、磐田・袋井エリアの古い実家はまさに該当するケースが多い制度です。
どちらの特例も要件が細かく、適用できるかどうかで手取りが数百万円単位で変わることがあります。実際の適用判断は税理士や税務署への確認が必要ですが、当社では売却のご相談の際に、こうした税制を踏まえたスケジュールづくりからご一緒に考えています。
選択肢2:貸す
「手放したくはないが、空けておくのももったいない」という場合は、賃貸に出す道もあります。家賃収入を施設費用に充てられれば、ご家族の負担はぐっと軽くなります。
ただし、磐田市・袋井市周辺で築年数の経った戸建てを貸す場合、現実的なハードルもあります。
入居者を迎えるための修繕・リフォーム費用が先にかかる(水回りだけで百万円単位になることも珍しくありません)
借主がいる間は、家を売りたくなっても自由に売りにくくなる
家賃相場によっては、修繕費の回収に長い年数がかかる
貸すかどうかは「いくらで貸せるか」だけでなく「いくらかけて、何年で回収できるか」で判断するのが現実的です。当社では地元の賃貸需要を踏まえて、貸した場合と売った場合の収支を並べて比較するご提案をしています。
選択肢3:残す(維持する)
当面はそのまま残すという選択も、もちろんあります。その場合は「放置」ではなく「管理」が条件になります。
誰も住まない家は、想像以上に早く傷みます。通風・通水がされない家は湿気で傷み、庭木や雑草は近隣トラブルの種になります。また、管理が不十分で倒壊などのおそれがある状態と判断されると、空家等対策特別措置法にもとづく特定空家などに指定され、固定資産税の住宅用地特例(更地より税負担が軽くなる仕組み)が受けられなくなる可能性もあります。
さらに、相続が発生した場合は注意が必要です。2024年4月から相続登記が義務化され、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の登記申請が必要になりました。正当な理由なく怠ると過料の対象になることもあります。実家を残す場合も、名義と登記だけはきちんと整えておくことが大前提です。
磐田・袋井で考える、ということ
実家の扱いを考えるとき、もうひとつ大事なのが地域の相場観です。
磐田市・袋井市は、エリアや道路付け、土地の広さによって、買主のニーズがはっきり分かれる地域です。同じ築40年の家でも、解体して土地として売ったほうがよい場所もあれば、リフォーム前提の買主が見つかりやすい場所もあります。実家がどちらのタイプかによって、残置物の片付けや解体の要否、かけるべき費用がまったく変わってきます。
当社は磐田市・袋井市周辺に特化した地域密着の不動産会社として、介護・施設入居・相続・空き家のご事情を含めて売却をご一緒に考えることを仕事にしています。「いくらで売れるか」の査定だけでなく、残置物の整理、解体の判断、税金のスケジュール、相続人どうしの調整、施設費用とのバランスまで、ご家族が困らない形を一緒に整理します。
まとめ ― 決めるのは先でも、考え始めるのは今
施設入居後すぐに実家を処分する必要はない。ただし名義・意思確認・収支の三点は早めに確認を
売る場合は、ご存命中の売却と相続後の売却で使える税制が変わる。期限のある特例が多いので、スケジュールが肝心
貸す・残す場合も「管理」と「登記」は必須。放置がいちばん損をする
実家のことは、家族だけで抱えるには重すぎるテーマです。「まだ売ると決めたわけではないけれど、話だけ聞いてみたい」――そんな段階のご相談こそ、歓迎しています。磐田市・袋井市周辺で、施設入居後の実家や相続した空き家にお悩みでしたら、どうぞお気軽にご相談ください。
※税制の内容は2026年6月10日時点の情報です。個別の適用可否は、必ず税理士・税務署にご確認ください。
参考情報(出典)
国税庁 タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」
法務省「相続登記の申請義務化について(2024年4月1日施行)」
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